9月16日、JR東日本及び西日本がコロナの影響が見通せないとして未定としていた業績予想を開示しました。
JR東日本4180億円 JR西日本2400億円の最終損失予想
開示された業績予想によると、JR東日本は4180億円、JR西日本は2400億円の最終赤字予想。コロナの影響である程度予測は出来たとはいえ、実際に金額を目にしてみると驚愕です。これまではインフラ業界と言えば、景気が悪化しても業績がある程度安定していると言われてきましたが、それは幻想だったわけです。(景気悪化ではなくコロナによる社会構造の変化ととらえることもできますが・・・)
今後需要は回復するのか 2種類の鉄道利用者
鉄道利用者は大きく2つに分けられます。1つは仕事・業務で(仕方なく)利用する人、もう1つはプライベート・レジャーで(自分から積極的に)利用する人です。
仕事で鉄道を利用するのは、主に通勤・出張・営業活動(外回り等)ですね。出張は出張先で(こっそり?)楽しむ(何を?)という事もありますので、仕事とレジャーの両方の性格を持つこともありますが、ここでは仕事に分類しておきます。また、学生の通学需要も広い意味で仕事と言って良いでしょう。これらは仕事をする以上必要な鉄道の利用と言えます。
仕事上での鉄道利用は、テレワークやオンライン会議・学生であればオンライン授業の導入が広がっており、コロナ前の水準に100%戻ることは無いと思います。
一方プライベート・レジャー利用は必要に迫られた利用ではありません。利用しなければしないで、日々過ごしていけるのです。
もちろん鉄道は2つの需要が合わさって成り立っているので、両方の需要が回復することに越したことはありません。
私は仕事上鉄道を利用することはほぼ無く、プライベート・レジャーでの利用がほぼ全てです。そんな中、私の中にある考えが浮かび始めたのです。
近隣の旅行で十分満足できることに気づいてしまった
感染予防のため、人が密集する鉄道を避けるようになった、と言う面が無いわけではありませんが・・・
私の最近の旅行先を振り返ってみると、愛知・岐阜・三重の東海3県がほとんど。例外は感染が少し落ち着いた時に行った沖縄と4連休の九州のみで、沖縄は感染が一時的に落ち着いた時にお試しで、九州はかなり前から予定が決まっていました。7月4連休終了後は全て東海3県内です。東海3県であれば仮に鉄道で向かったとしても運賃は片道2000円ほど。鉄道業界の売り上げに貢献できるほどの金額ではありません。
他方でGoToキャンペーンの実施により、宿泊費用がどんどん下がっています。一般的には値引きが35%、地域共通クーポンが15%という事で旅費が半額ですが、先日ツイートしたように、うまく予約すれば数百円~無料宿泊、ポイントや受け取れるクーポンを考慮すれば実質お金がもらえるようなプランもあるわけです。
三重クーポンと秋セールクーポンで1泊2食10050円→333円。さらに地域共通クーポンがもらえる。
— とめきち (@tomekichi_SFC) 2020年9月15日
今日のじゃらんはおかしい(褒めてる)
私が愛知県民だからとりあえず三重クーポンを攻めてるけど、全国的に同じようなプランはあるみたい。 pic.twitter.com/Zj1strtL9g
東京片道10000円・自宅周辺1泊2食1000円以下
東京まで片道10000円かかる中、自宅周辺には1000円以下で泊まれるような宿がゴロゴロしている。逆に言えば東京に1度行く金額で何泊もできるわけです。
これ、遠くまで行く必要ある?
私はそう思ってしまったわけです。
視点を変えれば一種のあきらめ、達観かもしれません。心の深い所では遠くへ行きたい、なんなら以前のように海外にどんどん行くような生活を望んでいるのかもしれません。でもそれは叶わない。だから無意識に欲求を押し殺している。そんな風にも思います。
旅行業界の大きな構造変化
GoToトラベルによって宿泊相場が下がってしまった結果、少なくとも私の中にはそういう感情が芽生えつつあるのです。ましてや今だに、県を跨ぐ不要不急の移動は自粛してくださいと言われ、近場の旅行・ステイローカル・ステイケーションが推奨され・・・。そしてソーシャルディスタンスの取りやすい自家用車。鉄道を利用する理由がどんどん減っていきます。
特別ここに行きたい!という強い思い入れや、実家がある場所が遠くだから行く!と言うならともかく、日常のレジャーとして自宅から出たい、と言う欲求に対して遠くに行くメリットが薄れてきています。
まだまだ強気のJR東海 ぷらっとのぞみ
先日JR東海(JR東海ツアーズ)が東海道新幹線のぞみ号の割引商品「ぷらっとのぞみ」の販売を開始し、話題となりました。東京⇔名古屋⇔大阪を結ぶドル箱路線の東海道新幹線は、特に割引をしなくても需要があったからです。ただ、ふたを開けてみると割引額は1割程度で、もともとJR東海本体の割引制度、EX予約を使えばこれくらいの割引はありました。ぷらっとのぞみで私の居住地名古屋から東京は10000円の設定。通常料金は11100円ですが、EX予約なら10310円。EX予約は変更がききますので、乗る列車指定、乗り遅れは完全無効のぷらっとのぞみに対して310円の差額はさほど高くは無いでしょう。ちなみに新大阪⇔東京間だとぷらっとのぞみ12700円に対してEX予約は13620円。名古屋に比べて多少お得度は上がりますが、それでも値引き率は約13.7%。
先日実際に利用したみんなの九州きっぷや、先日発表されたJR西日本のどこでもドアきっぷ等の破格さと比べれば、JR東海はまだまだ強気なのです。
値下げ後の値上げが困難?
JR東海が値下げしたくない理由は何でしょう?
理由は様々あると思いますが、
価格は一度下げてしまうと下がった値段で新しい相場感が生まれてしまい、再値上げが難しいという現象が生まれます。
前記事で述べた、GoToキャンペーンによる宿泊料金の値下がりに対する私の懸念もここにあります。
コロナ前に1万円で泊まれたホテルがGoToキャンペーンで5000円で泊まれるようになりました。何回も5000円で泊まっているうちにこのホテルは5000円で泊まれるんだという感覚になります。いざGoToキャンペーンが終わって1万円に戻った時、以前と同じように泊まるでしょうか。
JR東海以外のJR各社も同じ考えはあると思います。それでも破格のきっぷを出さなければならないほど、今は需要が落ち込んでいるのでしょう。どちらを取るかは各社の経営判断です。
まとめ 今後どうなるの?
鉄道業界が今後どうなるのか。正直私にはわかりません。もちろん鉄道好き、乗り物好きとして潰れてしまえばいいなんてこれっぽっちも思っていません。それでも経営がかなり厳しいのは事実です。起死回生の一手があるとも思えません。公的資金投入や、再度の国鉄化もあるかもしれません。JRのままであれば、不採算路線の廃止もやむを得ないでしょう。
結局の所神のみぞ知る。そんな感じではないでしょうか。